鍼灸治療とは
世界保健機関(WHO)からさまざまな症状に効果があると認められている、世界中で認められた治療法です。
直接筋肉にアプローチできるため、マッサージ等では難しい筋肉の緊張状態を解すことができます。
また自律神経にも影響を与え、自然治癒力を高める効果があります。
鍼灸の歴史は大変深く、紀元前の中国ではすでに鍼治療が広く流行したという文献も残っており、
約2000年以上の長い歴史がある伝統医学で、日本では、医療分野の国家資格である「はり師」「きゅう師」が施術の資格を保有しています。
厚生労働省の発足したプロジェクトチームでは西洋医学だけで対処できない現代のさまざまな疾患に対して鍼灸治療も取り入れた医療の促進を進めています。
また、中国、日本だけでなくアメリカ、ヨーロッパでは日本以上に医療現場での活用が進んでおり、もはや医学の東西という枠組を超えて、人々にとって重要な医療手法としてグローバルに普及している状況と言えます。
しかしながら日本は先進欧米諸国に比べて鍼灸治療の医療への活用が遅れをとっています。
アメリカは公的医療制度がない国ですが、現代西洋医学にくらべて医療費のコストが安いため、鍼灸治療を日常的に選択するようになっており、イギリス、ドイツ、イタリアなどのヨーロッパでも鍼灸治療は盛んで、健康保険制度も積極的に取り入れられています。
しかし、それでも日本の医療における鍼の導入は少しずつ前進しています。
2010年に厚生労働省は「統合医療プロジェクトチーム」を発足しました。現代西洋医学による医療と鍼灸をはじめとする補完代替医療(CAM)をあわせて患者を治療するという「統合医療」を推進することを目的として活動をはじめています。
古来より伝統的に行われてきた鍼灸治療など、代替医療と西洋医学を統合し、患者中心の医療を行うものが統合医療とされ、国を挙げて研究開発、人材確保の取り組みの促進が始まっています。
日本国内でも、医療現場やリハビリ現場などで実際に鍼灸治療法が取り入れられているケースも増加傾向で、これからの日本社会の高齢化に伴い、医療およびリハビリの現場におけるさらなる実践が望まれる状況にあります。
はり・きゅうの効果
はりの効果
疼痛の緩和
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痛みや不快感を和らげ、身体の快適さを回復させる効果があります
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筋肉の緊張解消
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筋肉を緩め、痛みやこわばりを和らげ、日常生活動作の改善を促進します。
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ストレスの軽減
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鍼療法は自立神経を整えることからリラクゼーション効果があり、ストレスを軽減します。
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きゅうの効果
血行の促進 | 身体を動かす機会が減ると血液の流れが悪くなってきます 灸を行うことで血行が改善し体に栄養や酸素が行き渡り 冷えやむくみの改善、新陳代謝の改善など、全身的に症状の改善を促します |
筋肉の緊張解消 | 筋肉を緩め、痛みやこわばりを和らげます。 |
免疫力の向上 | 灸療法は免疫系を刺激し、体の抵抗力を高める助けとなります。 |
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鍼(はり)の効果について
鍼治療を受けた経験がない方にとって、鍼の効果というものは、想像しにくいものがあるかと思います。実は痛くない鍼があったり気持ちいい鍼も知っていただきたい思いはありますが、様々な症状を解決することができる鍼治療がどのようなものか、6つにわけて詳しくご説明いたします。
1. 血液の流れを改善する血液は、全身の細胞に栄養と酸素を送り届けています。
そのため、血液が完全に断たれると細胞は死んでしまいます。
筋肉の硬さや交感神経系が優位な状態が続くと、血流が悪くなり、細胞が必要量の血液を得ることができないと、細胞のパフォーマンスは低下してしまいます。
血液の量が足りないと、細胞は緊急事態を知らせるため「痛み」として信号を送ります。
筋肉の硬さがあると、血管が圧迫されて血流が滞ってしまいますが鍼の刺激は、血管を拡げる化学物質(CGRPやサブスタンスP)を放出させて、血液の通り道を拡張します。
血管が拡張することで、血液の渋滞が解消されて、細胞に十分なエネルギーや酸素が供給されることで、痛みや違和感が消失します。
2. 脳の働きを高める鍼は脳を癒す力があります
脳は、末梢神経からの「痛み」を受け取ってもすべてを感じ取るわけではなく、とりわけ重要性と緊急性が高い情報を優先的に感じさせます。
しかし、極度の疲労や心配事などの心理的なストレスにより、脳の情報を処理する能力が低下すると、不必要な痛みへを感じたり、通常は痛みとして感じないものを「痛み」として感じたりします。
鍼の刺激は、疲弊してしまった脳を効率的に休ませる効果があります。
脳に休息を与えることで、脳の処理能力を回復させて、不必要な「痛み」を感じにくくするのです。
足に鍼をするだけでも腸が動き出したり眠くなるのは自律神経が副交感神経優位に働くことでおこります。頭を触らずとも鍼が全身に作用するのを実感できます。
3. 快楽物質が出る鍼の刺激が加わると、エンドルフィンなどの化学物質が放出されます。
エンドルフィンは、痛みを抑える鎮痛効果とともに脳に対して快楽物質として働きます。
普段、非常に働き者の脳細胞にとって、実は鍼の刺激は何よりの報酬になります。
4.痛みを感じにくくする「痛いの痛いの飛んで行け」の原理
痛みは、末梢神経が感じ取り、脊髄を通して脳まで伝達されます。
末梢神経に鍼の刺激が加わると、鍼の刺激が元々の痛みより優先されて脳へ伝わるため、痛みが緩和されます。
「痛いの痛いの飛んで行け」は「擦る」ことで同じ現象が起こりますが、鍼の刺激は人間の体にとって特殊な刺激なので、擦るよりも効果的に痛みを抑制することができます。
5. 痛みの伝達を抑える痛みの刺激は、末梢神経を伝わり、脊髄を通って脳に伝わって知覚されます。
一方で、鍼の刺激も末梢神経を伝わって脊髄を通過します。
鍼の刺激が、脊髄にあって痛みの情報伝達の中継をするT細胞を抑制します。
すると、脊髄から脳へ伝わる痛みが弱まります。
これを「ゲートコントロール」と呼びます。
1965年に英国人のパトリック・D・ウォールとカナダ人のロナルド・メルザックが発表した仮説です。
6. 免疫力を上げる。白血球は、人間の身体を守る軍隊のようなものです。
つまり、免疫力は白血球の強さに基づきます。
鍼は、体内に入ると異物とみなされるので白血球が出動して、活性化します。
ですので、鍼の刺激によって定期的に白血球の訓練を行うことで、免疫力が上がることがわかっています。
鍼灸では、風邪などのウイルス性の疾患も治療することができます。
鍼灸師は元来、内科系の疾患を専門としていました。
鍼灸師がウイルスや細菌による疾患を治療するとき、ウイルスや細菌をやっつけるのではなく、鍼や灸で身体の免疫力を高めることで、ウイルスや細菌に勝てる身体を作っています。
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灸(きゅう)の効果について
灸の治療はモグサを燃焼させることで生まれる温熱刺激とモグサの薬効を利用した治療法です。
モグサとは、ヨモギの葉の裏側に生えている腺毛という白い産毛を乾燥させて、さらに不純物を取り除き、精製されたものです。ヨモギの腺毛の油分にはシネオールという成分が多く含まれており、このシネオールが薬効を高める役割を担っていると考えられています。当院では治療箇所や症状に合わせ様々なお灸を使用し治療を行います。
お灸をすると、皮膚の下にある筋肉や血管、リンパ節が刺激されます。 すると、細胞が活性化され、免疫作用がアップするほか、リンパの流れが改善されむくみの解消にもつながります。
さらに温熱効果によって血管が収縮・拡張し、局所の充血や貧血を調整し炎症をやわらげる効果もあり、また香りにも癒されいいこと尽くめです。
実際に私もヨモギの葉からモグサをつくりました。ふわふわで自然のとてもいい香りです。
1.免疫力の向上灸は、患部に白血球を集め、さらに抗体(白血球が使う武器)や補体(標的につけるしるし)も併せて呼び寄せるため、白血球の食作用や抗菌作用を強めること(オプソニン効果)で免疫作用を高めます。
適応症:扁桃腺炎、外傷、火傷、デキモノ、急性上気道炎(風邪)、結核、下痢
2.自律神経の正常化灸は、モグサを燃焼させるため、徐々に熱量が増して、徐々に熱が冷めていきます。すると、熱量の増加に合わせて、局所の血管は徐々に拡張し、その後ゆっくりと時間をかけて収縮していきます。このように、熱刺激で血管に働きかけて、血管の運動性を高めると、血管を動かしている自律神経が本来の働きを思い出して、正常に機能するようになります。
適応症:心臓神経症、各種恐怖症、不安症、自律神経失調症
3.抗アレルギー作用灸は、過剰反応を起こす免疫細胞を鎮静化してアレルギー反応を抑えます。
適応症:喘息、皮膚炎、食物アレルギー
4.血液循環の改善と血液の質の向上灸の温熱刺激で、血液循環が悪い場所の血管を拡張させることで、局所に溜まっていた老廃物などが血管に回収されやすくなり、むくみが解消します。
また、モグサは、赤血球の造成を促し血液中の酸素量を高めたり、血液中の酸化を防いだり(抗酸化作用)、血液中の毒素を発汗や排尿により排出しやすくしたりするため、血液の質が向上します。
5.細胞の機能亢進作用機能不全を起こしている細胞を鼓舞して機能を亢進させます。